著者紹介

株式会社ウェルネスプランニング札幌
代表取締役 小松信隆 氏

小松氏

コンサドーレ札幌 管理栄養士
ノルディーア北海道 栄養アドバイザー
新札幌駅前内科循環器 管理栄養士 
北海道体育協会スポーツ医科学委員会トータルサポート測定事業相談員
道内の各大学・専門学校にて非常勤講師を務める
 ・天使大学(スポーツ栄養学)
 ・日本赤十字北海道看護大学(臨床栄養学)
 ・札幌国際大学(栄養学)
  ・北海道体育大学校(スポーツ栄養学)

第5回 実践スポーツ栄養学

実践スポーツ栄養学


スポーツ栄養コラムの最終回は、”実践スポーツ栄養学”と題して「何をいつ食べたら良いのか?」という具体的な説明をさせていただきます。

その前に栄養の流れの説明を少々・・・。
食べ物は口から入って、胃、十二指腸、小腸という流れで消化されていきます。
次に大腸・・・と行きたいところですが、それでは排泄物の流れになってしまいます(笑)
小腸の次は「門脈という血管」に入る栄養と「リンパ管」という管に入る栄養があり、門脈は肝臓へ、リンパ管はそのまま全身に繋がっています。
門脈には「炭水化物(糖質)」が分解された”ブドウ糖”と「たんぱく質」が分解された”アミノ酸”が入り、リンパ管には「脂質」が分解された”脂肪酸”が入ります。
門脈から肝臓へと運ばれた”ブドウ糖”と”アミノ酸”は栄養の司令塔である肝臓にコントロールされて、必要な場所に運ばれるというのが栄養の流れです。

実はその時、食べた物によって、分解される速度が違ってくるのです。
では、何が速くて、何が遅いのか?
一番分解が速い栄養は「糖質(炭水化物)」です。
特に液体状の「糖質」が一番速く、次に固体の「炭水化物(糖質)」、たんぱく質と続き、一番分解が遅い栄養が「脂質」なのです。
更にこれらの栄養は、必要な場所、つまり筋肉に届かない限り何の意味も無くなってしまいます。
意味が無いだけなら良いのですが、筋肉に届いていない食べ物(特に胃の中のもの)は”重り”になるだけ・・・。
”負けるために食べる”ことにもなりかねません。

勝つために「いつ何を食べるか」?!

例えば子ども達が大好きな「カレーライス」!
「カレーライス」に一番多く含まれている栄養は「脂質」です。
個人差もありますが、試合や練習前に「カレーライス」を食べるなら、最低4時間、場合によっては5時間たっても分解されていないこともあります。
10時試合開始であれば、9時にウォーミングアップを開始するとして、「カレーライス」ならば5時には食べなければならないということです。
大変ですね・・・。
3時間前(ウォーミングアップ)の6時であれば、”普通?”の食事。
ごはん、味噌汁、焼魚、煮物など・・・。
子どもにとっては普通ではないかもしれませんね・・・。(普通になってほしいのですが)
ここでパンを選ぶと、パンに合うおかずは「あぶら」が多いために3時間では間に合わないでしょう。
2時間前の7時であれば、”おにぎり(あぶらが少ない具で)”や”うどん”、”バナナ”などがギリギリ間に合います。
1時間しか時間が無ければ、”ゼリー飲料”が限界です。
また、1時間を切ってしまった場合は飲食をしない方が良いでしょう。
飲食をしない場合には、「たんぱく質」について解説した号に書いたように、筋肉や内臓が分解されてエネルギーになるため、試合や練習をしない方が良いでしょう。
ということは・・・、バスケを辞めた方が良いのかもしれません(笑)
このように、食べる物によって食べなければならないタイミングは変わってしまうのです。

ちなみに、分解に時間がかかる食べ物ほどカロリーが高く、スタミナを持続できるものになります。
3時間かけて分解したものは3時間、2時間かけて分解したものは2時間、1時間で分解できたものは1時間しか持続できないと考えていただいて、間違いではないでしょう。
その日の練習時間や試合数などを考えて食事内容を考える必要があります。

ダブルヘッダー・トリプルヘッダー前の栄養コンディショニング

 次に「ダブルヘッダーやトリプルヘッダーの場合の栄養コンディショニング」を紹介させていただきます。
 「試合前の栄養コンディショニング」と大きくは変わりませんが、試合間の栄養補給や水分補給の注意点など、2試合目や3試合目に安定して力を発揮するための方法を解説します。
 なお、1試合目の前の食事は“できる限り特別ではない普段通りの食事にする”ことと“「炭水化物」と「ビタミンB1」を中心に「あぶら」の少ない食事にする”ことには何ら変わりはありません。

◆1試合目が9時開始、2試合目が11時開始の場合
(「勝てば13時から3試合目」、勝つことが前提のコンディショニングです)
4:00起床
 日頃から早起きをしていないお子さんには辛すぎる時間ですが、ダブルヘッダーやトリプルヘッダーを乗り切るためには、ここが一番重要です。
4:30~4:45散歩またはジョギング
5:00~5:30朝食 
 「炭水化物」と「ビタミンB1」を中心に「あぶら」を控えて、できる限り普段通りの食事をたっぷりと
(たっぷりが重要です。1試合分ではありませんので、1試合でおにぎり2個であれば3個以上は・・・。)
6:30水分・糖分補給
 1試合の場合は500ccのスポーツドリンクを補給するタイミングですが、2、3試合の場合や朝食が十分に食べれなかった場合はゼリー飲料を使っても良いでしょう。
6:45~8:00水分補給
8:00~9:00ウォーミングアップからキックオフ
 ここは1試合の場合と変わりません。しっかりと水分補給を!
9:00~9:50 1試合目
9:50水分補給
 1試合目終了後、1秒でも早く水分補給が必要です。
 ここで試合によって失われた水分を元に戻す必要があります。
 しかし、ここでスポーツドリンクを使ってしまうと、2試合目で足が止まります。
10:00~10:40乳酸除去・水分補給
 水分補給後に2試合目に向けて体力温存といきたいところですが、ここは動き続けることで、1試合目で溜まった乳酸が除去されます。
 もちろん、更に乳酸が溜まるような激しい動きをすることは逆効果ですが、2試合目で走りきるためには、栄養補給よりも乳酸除去を優先します。
 20分で吸収してくれる栄養はありませんので、ここで栄養補給をすることは、身体に”重り”を入れることにしかなりません・・・。
 ここでお腹が空く場合は朝食が足りなかったのだと後悔してください。
 既に取り返しはつきません・・・。
11:00~11:50 2試合目
11:00~11:40乳酸除去・水分補給
 1試合目と2試合目の間と同じように、先に乳酸の除去を優先します。
 ゆっくり動き続けることで、乳酸を除去します。
11:40水分・糖分補給
 1時間しか無い中での栄養補給は諸刃の剣です。
 「ゼリー飲料を半分」とか「スポーツドリンク」が限界でしょう。
12:40~13:00ウォーミングアップから3試合目
 しっかりと水分補給を!
13:50試合終了
 好きなものを食べさせてあげてください!

 これがダブルヘッダーやトリプルヘッダーの場合の栄養コンディショニングです!

 朝食を上手に食べなければ、ダブルヘッダーやトリプルヘッダーは乗り切れません。
 「早寝・早起き・朝ごはん」・・・、どこかで聞いたフレーズですが、それが全てなのかもしれません。
 
「スポーツ栄養コラム」は、いかがでしたでしょうか?
5回に渡って解説した内容を100%できなくても、少しでも理想に近づけることが出来れば、勝利が寄ってきてくれるかもしれません。
もちろん、どんなに栄養が良くても、技術が無ければ勝てないのが現実ですが・・・。
また、どこかで皆さまにお目にかかれることを楽しみにしております!

目指せ!未来のトップリーグプレーヤー!
文責:小松信隆

 

 

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